第10章 期末テストなんてあるんだね
開かれたドアから現れたのは、角を生やしたお母さんだった。
比喩ではなく、本当に角を1本額の中央に生やしている。
「舞香……!何故、奴良のわっぱが部屋に居るのじゃ!」
あわわわわ。
怒ってる!超絶怒ってるー!
「えっと、これは……」
何故リクオ君がここに居るのか説明しようと口を開きかけるが、そう言えば詳しい理由は聞いて無い。
いや、待って? 思い出した!!
確か、”何故私のお母さんに嫌われているのか?”だったはず。
でも、そんなのお母さんに対して、理由にならない。
ぐるぐる考えて、やっとまともな言いわけが頭に浮かんだ。
「あ! そうだ! 勉強! 数学判らないところが残ってたから、教えに来てくれたの!」
苦しいっ! すごく苦しい言いわけだ。
でも、これで納得して欲しい!
私は願いを込めて、角を生やしても美麗なお母さんの顔をじっと見つめる。
と、願いもむなしく突然夜リクオ君は、後ろから抱き締めるような形で私の首に腕を回した。
「よう。雷獣。オレは舞香に会いてぇから来たんだ。無粋な真似しねぇでくれねぇか?」
その言葉に一瞬頭の中が真っ白になる。
リクオくーーんっ!!!
「ほう? あいたい、とな?」
パリパリパリと、お母さんの身体を電気が放電し始める。
「お母さんっ! リクオ君の言う事は冗談だよ!冗談!本当に勉強を…「オレは嘘が嫌いなんだ。なぁ舞香」」
おバカーーーー!せっかく取り成してるのにーー!
「舞香の肌は柔らかくて甘かったぜ?」
耳元で囁かれたその言葉に思い切り顔が赤くなる。
しかし、流石は獣の妖怪なのか、凄く耳の良いお母さんにも聞こえたらしく、身体中をブルブル震わせたかと思うと真珠のような肌にフサフサの毛が生えて行く。
そして、お母さんは電気を纏った雷獣の姿へと変えた。
「愛しい舞香にはまだ早い! 去(い)ね! わっぱ!」
その言葉と共に咆哮を上げ、電撃を夜リクオ君に向かわせる。
「ちょ、まっ、」
そして私と夜リクオ君は強い電撃に包まれた。