第10章 期末テストなんてあるんだね
『嫌われている』その言葉に、一瞬私は呆けてしまった。
そして、美麗なお母さんの顔を思い出す。
そう言えば、最初からリクオ君の事に関しては良い顔して無かった。
でも、直接言うハズないし……
私は思い切ってズバリッと切りだしてみた。
「リクオ君、お母さんから嫌いって言われた?」
「ああ」
はうあーー!!
思わずムンクの顔をしてしまう。
なんてこと言ってんの、お母さん!
そこは、思ってても本人に言っちゃダメでしょー!
「あと、絶対ぇ手ぇ出すなとも言われたな」
手?手?手って!?
ぐるぐる混乱していると、いつの間にか至近距離にリクオ君の顔があった。
心臓が思い切り跳ね、顔に熱が集まって来る。
そんな私の顎を片手で持ち上げると、更に顔を近付けて来た。
「なんで、んなこと言われなきゃいけねーか知らねぇが、この前の礼だけはきっちりしねぇとな」
「礼?」
「ああ、やられっぱなしは、性にあわねぇ」
そう言うと、いきなり鼻のてっぺんをカプリと噛まれた。
はうあーあ!?
そして、ペロリと舐められた。
ど、動悸が止まらない。
「いや、あうえ!?」
私の様子に、クッと笑う。
「手は出してねぇぜ」
もう、何がなんだかわからない。
と、言うかこのシュチュエーション。以前にもあったよね!?
はっ!?
あの時のお返し!?
「……うーっ」
負けたようで悔しさが沸いて来る。
「ん?」
「お、お返しのお返しっ!」
頬にカプッと噛みついてやろうと顔を近付けると後ろ頭を掴まれ動けない。
何故か、不敵に笑みを浮かべるリクオ君。
「同じ手はくわねぇぜ?」
言葉が出ず、ぱくぱくと口を動かす。
顔も凄く熱い。きっと真っ赤なんだろう。
とリクオ君は唇の端を上げると、また息がかかる至近距離まで顔が近付いた。
吐息と吐息が混じり合い、唇と唇の距離がゼロになりそうになる。
と、その時、部屋のドアがドンドンッとノックされた。
「舞香! 話し声が聞こえたようじゃが、誰かおるのかえ?」
「わっ! え? え?」
誰もいないよっと続けようとしたら、バキッという音と共に、ドアが開かれた。