第10章 期末テストなんてあるんだね
リクオ君? 何がダメなんだろう?
不思議に思いながらも、掴まれた腕が熱く感じる。
心臓がドキドキと五月蠅い。
と、リクオ君は清継君を強く見据えながら、言葉を続けた。
「女の子に無理言っちゃダメだよ! 清継君!」
「い、いや、これはだね……」
困惑した声で清継君は反論しようとするが、近付いて来た半眼の巻さんに人差し指を突き付けられながら「奴良の言う通りよ。それに、あんた顔近付けすぎ」と言われ「うっ…」と言葉を飲み込んだ。
そして鳥居さんが、空いた方の手を握った。
「あんなの放っといて部屋に行こう!」
「あ、うん」
清継君と巻さんの会話の続きが気になるが、いつまでも廊下に皆を立たせているわけにはいかない。
「こっちだよ!」
私は改めて廊下の突き当たりにあるリビングへと皆を誘導した。
リビングは20畳ほどのフローリングタイプの部屋だ。
お母さんがこういう広い空間の部屋に憧れていて、それをお父さんが一生懸命叶えた部屋。
可愛らしいもの好きのお母さんらしく、カーテンは白のレース編みのもの。
広いガラスサッシの向こうに見える庭には、色とりどりの可愛らしい花。そして白いテーブルと椅子。
大きなテレビの上には、所狭しと手編み人形が置かれている。
その横にある棚にも人形が置かれていた。
中央に大きなガラステーブルが置かれ、その両脇に3人用のソファーを2つずつ並べている。
昨日までソファーは1つずつしか無かったのに、何時の間に揃えたんだろ?
リビングの入り口で驚いていると、手を繋いだままのリクオ君が顔を覗き込んで来た。
「どうしたの? 舞香ちゃん?」
「っ!」
いきなり覗き込まれ、心臓が飛び跳ねる。
そして急速に顔へ熱が籠った。
「な、なんでも、ないっよぇ!」
「へ?」
ああ、なんでこんなとこで、どもるかな!私!
慌てて首を横に振ると、私は誤魔化す為に笑顔を作った。
「い、いや、なんでもないよ、うん! どうぞ入って入って!」
先にリビングへ入った私は、何故か顔を赤くし固まってしまったリクオ君に気付かなかった。