第10章 期末テストなんてあるんだね
バクバクする胸を鎮めようとしていると、ふいに入り口で佇んでいるリクオ君と氷麗ちゃんの会話が聞こえて来た。
「若? どうされたんですか? お顔が真っ赤ですよ?」
「うえっ!? なっ、何でもないよっ!」
リクオ君の顔が赤い? 風邪?
私は、思わず生徒会室の入り口に目を向けた。
そこには熱を計ろうとリクオ君の額に手を伸ばす氷麗ちゃんと、それを止めさせようとするリクオ君の姿があった。
「また風邪をひかれたなら大変ですっ!」
「うわっ、氷麗、そんなんじゃないって、こらっ、やめろっ」
「もーっ、大人しくして下さいっ!」
その仲の良い姿に胸がツクンと一瞬痛むが、リクオ君の顔の赤さに霧散した。
本当に顔が赤い。
大丈夫かな?
心配しつつ2人のやり取りを見ていると、清継君が氷麗ちゃんとリクオ君に近付く。
そしてリクオ君の肩をポンッと叩いた。
「奴良君。2人で一体なにをしているんだい?」
「え、いや、これは」
不思議そうな顔をして尋ねる清継君に、リクオ君はなんでもないと首を振る。
そして、何故か清継君の後ろに移動してきた島君が、持っていたノートを悔しげにキリキリと噛んでいた。
そのノートの表紙には、”及川さん観察ノート”とマジックでくっきり書かれている。
何時の間にそんなもの付けてんの、島君。
もしかして、ストーカーになりかけてる?
そう思っていると、清継君はリクオ君に向かって言葉を続けた。
「それは良いとしても「いいんっすか!?」うるさいよ、島君。 名誉会員である君がいつもこんなに遅いようでは、あの方に会えるかもしれない場所に一緒に連れて行けないぞ!」
「あ、はは……」
片手で後ろ頭にやりながら、乾いた笑い声を零すリクオ君。
まあ、笑いたくもなるよね。
あの方イコールリクオ君だからね。
うんうん、と心の中で頷いていると、そんなリクオ君の様子を気付かない清継君は、得意げな顔で更に言葉を補足した。
「まあ、それは期末テスト後の事だけどね!」
と、清継君の言葉を聞いた巻さんが柳眉を上げ大声を上げる。