第10章 期末テストなんてあるんだね
「そうか、そうか。妖怪バカの清継も、ついに恋愛に目覚めたんだ?」
「は?」
「清継君も恋愛するんだねー」
2人のからかうような言葉に、キョトンとしていた清継君だったが、会話の内容を理解して来ると、再び大きな声を出した。
「ちがーう! ボクが敬愛しているのは、唯一人! そう。闇の主のあのお方だけだ! ああ、思い出すだけで胸が……!」
お花畑にいるような表情であのお方(きっと夜リクオ君)を思い出す清継君に、巻さんと鳥居さんは、こいつダメだ、という呆れた視線を向ける。
そんな清継君を見ていた私は、ふと、ある事に気が付いた。
ん? そう言えば、清継君も一応身近な異性?
「ふーむ?」
良く見れば、顔も整っている……ように見えるし。
性格も明るいと言えば明るい。
目的に一直線で、脇目も振らない。
そうだ。清継君を好きになれば……
私は、じーーっと清継君を観察する。
それに気が付いた清継君は、不思議そうな顔をした。
「なんだい? 有永さん?」
声も良い……
「はっ!? もしかして、今日もボクの妖怪談義を聞きたいのかいっ!? はっはっはっ、いーとも! ボクに任せたまえ!」
勘違いが多いけど……
「有永ー、嫌なら嫌って言った方がいいぜー?」
「そうそう。清継君、すぐ暴走するからねー」
じーっと清継君を観察し続ける私に、巻さんと鳥居さんが心配げな顔をして、声を掛ける。
そんな2人に清継君は異を唱えた。
「君達! 暴走とはなんだい!? 失敬な! ボクはいつでも紳士だよ!?」
「えー? いつも暴走状態じゃん」
「うん」
「ガーンッ、そんな!」
口で擬音っぽい事言うし、楽しい人だよね。
よっし。私は清継君を好きになる。好きになる。
リクオ君は好きじゃないっ!
普通、普通――っ
清継君、大好きーっ
強く自分に言い聞かせていると、後ろで扉が開く音がした。
そして、柔らかな声が耳に届いた。
「あれ? まだ始まってなかったのかな」
「若、らっきー、ですねっ!」
その声に心臓が大きくドクンッと跳ねる。
そして、鼓動が早くなる。
隣に居るカナちゃんに聞こえてしまうくらいに。
ううっ、静まれ、心臓ーっ