第9章 覚醒
「ボクの事、下の名前で呼んでよ! ボクも有永さんの事、名前で呼ぶからさ!」
「へ?」
「うん。友達同士なんだしさ。ね!」
「え、っと、リ、クオ……君」
うわっ、なんだか下の名前呼ぶの恥ずかしい!
一気に顔へ血が集まり、火照る。
「……え? あ、あれ?」
と、何故かリクオ君も顔が真っ赤になっていた。
リクオ君は顔を片手で隠すと、横を向く。
「えっと、なんだかごめん。ボク、ちょっと……」
「わ、私も……」
そう言いつつ、私は火照った顔を俯かせた。
その恥ずかしさは、1時間後、お父さんを伴った若菜さんが障子を開けるまで続いた。
なんで、名前呼ぶだけでこんなに恥ずかしいのー!? 私ー!?
そんなこんなで、奴良リクオ君を名前で呼ぶ事になったけど、改めて考えると、リクオ君は本当に優しくて器が大きいんだ、と感じた。
でも、そんなリクオ君を好きになる事は出来ない。
怪我をさせるような私は、好きになる資格なんてないから。
代わりに好きな人、出来るかな?
ううん。無理矢理でも、作らないと……!
この想いが小さいうちに……、早く!
私は家に向かう車の中で、再び決意を固めた。