第9章 覚醒
「なんだ、そっか」
「そうなのねー。舞香ちゃん、相変わらず可愛いわー」
「……有永……。気合いって、何の?」
でも、2人が素直に頷く中、訝しげな表情で不気味そうに呟く氷麗ちゃん。
私はそんな氷麗ちゃんに心の中で、答えた。
うん。気にしたら、負けだよ。氷麗ちゃん。
と、奴良リクオ君の夜着と包帯を整え終えた若菜さんは、氷麗ちゃんの腕を引き立ち上がらせた。
「じゃあ、舞香ちゃんゆっくりしてってね!」
「お、お待ち下さい、若菜様! 男女2人をこんな一部屋に残すとリクオ様が!」
「いーじゃない! ほら、行きましょ♪」
「え? え? そんな! 若――!」
若菜さんは慌てる氷麗ちゃんを伴い部屋を出ていった。
えーっと?
呆然としていると、奴良リクオ君が座布団を出して来た。
「有永さん。慌ただしくてごめん。取り敢えずここに座ってよ」
「あ、うん」
う、わわ。改めて2人きりになると緊張する!
緊張しながら座ると、奴良リクオ君は太陽のような笑顔を向けて来た。
「有永さん、わざわざお見舞いありがとう! この包帯は大袈裟に巻いてるだけだし、明日から学校行けるから」
そう言う奴良君は包帯だらけの身体だった。
満身創痍と言っても過言ではない。
それが自分の所為かと思うと、再び胸が苦しくて涙が出そうになった。
私はガバッと頭を下げる。
「奴良君、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
「うえ!? ちょ、あ、頭上げてよ! 有永さん!」
私はそっと頭を上げると、眉根を寄せた。
「い、痛かったよね?」
「あはは。そんな事気にしてたの? 大丈夫! ボクはヘイキだよ!」
それが、無理して明るく振る舞ってるように見えて、私は小さく首を振った。
「あ、あの、お詫びにもならないかもしれないけど、私に出来る事があったら、何でも言って!」
私の言葉にキョトンとする奴良君。
そして小首を傾げる。
「うーん、そんな事言われても……」
考え込むリクオ君を見ながら、私は、固唾を飲んで、次の言葉を待つ。
「うーん……、あ! そうだ!」
ぽんっと手を打つ。そして、奴良君は自分自身へ向けて指差した。