第9章 覚醒
「あはは、ごめんなさい。」
「どうしたんだい? もしかして苦手意識を乗り越えたのかな?」
「あ、うん。そう! そんな感じ!」
私は真意を誤魔化しながら車に乗り込んだ。
そして、さっそくお願い事を口にした。
絶対に行かないワケにはいかない。
「あの、お父さん、ごめん! 奴良家に向かってくれないかな?」
「え? 奴良家かい?」
「うん。奴良君が今日休みだったから、お見舞いに行きたいんだ!」
「おや? 昨日の件でかい?」
「うんっ……、て、え?」
私、昨日戦っていた銀髪の妖怪が奴良リクオ君だって、お父さんに言ったっけ?
なんで、知ってるの?
お父さん?
もしかして、私と同じ世界からの転生者って事……、ないよね?
お母さんの話しだと、前世は僧侶だったって話しだし……。
でも、僧侶になる前に私と同じ世界から来てたら…?
まさか…、いや、そんな事あるハズないよ! 多分!
……でも…
奴良家に着くまでお父さんと別の話しをしながら、ぐるぐると考え続けた。
相変わらず奴良家の門は大きく、威圧感があった。
緊張する私を余所にお父さんは、チャイムを押す。
と、出て来たのは、首無さんだった。お父さんの丁寧な物腰に首無さんは、私とお父さんを門の中に入れてくれた。
そして玄関で出迎えてくれたのは、ニコニコ顔の奴良君のお母さん。若菜さんだった。
お父さんは若菜さんと挨拶を交わす。そして、すぐに若菜さんは奴良君の部屋に通してくれた。
私だけを。
お父さんはぬらりひょんさんに用事があるから、と別行動になったのだ。
「リクオー! 舞香ちゃんがお見舞いに来てくれたわよー!」
「うえ!? 有永さん!?」
「わわっ、若菜様!? すいません!」
障子を開けるとそこには、包帯まみれの奴良リクオ君を押し倒す氷麗ちゃんの姿があった。
えーっと?