第9章 覚醒
って、なんでゆらちゃんが居るのー!?
普通は寝てるよね!?
それとも、まだ夜の10時頃!?
「陰陽師かえ。お主らは、いつも妾を悪者にするのう」
隣に居たお母さんが溜息交りに言う。
しかし、その後の言葉に転倒しそうになった。
「じゃが、そのお陰で背の君との愛が深まったぞよ。甘酸っぱい想いをした日々を思い出すのう」
うっとりと過去にトリップしているお母さん。
体から大きなハートが何個も発生している感じだ。
もちろん、背景はピンク色だ。
お母さん。今はウットリしてる時じゃないよ!
そう心の中で突っ込むと、ゆらちゃんに向き直った。
しかし式神を構えたゆらちゃんは、呆れたような顔をしてお母さんを見ていた。
「なんや、この妖怪……」
私のお母さんです。
「ごめん……」
と、柔らかな男の人の声が割って入って来た。
「やあ、取り込み中かな?」
ん?
ゆらちゃんとは反対方向の歩道を見る。
そこには柔らかな笑みを浮かべたお父さんが片手を上げながら、ゆっくりとこちらに向かって歩いていた。
「芙蓉。間に合ったみたいだね」
その言葉にお母さんは喉を鳴らしながら、お父さんに駆け寄る。
と、ゆらちゃんが鋭く叫んだ。
「動くな! 妖怪! 人間は食わせへん! 貪狼! あの人を助けるんや!」
そしてお母さんに向かって式神を飛ばした。
お母さん!!!