第3章 腹をくくりましょう
なんで、なんで!?
疑問がぐるぐると頭の中を駆け巡る。
頬が何故か、熱い。
ううっ、なんで頬が熱いの!?
リクオ君は、心の中であわあわしている私の手を離さぬまま皆が居る場所に辿り着くと、石膏像の奥を懐中電灯で照らしている小柄な男の子に声を掛けた。
「島君、居た?」
「クモの干からびた死骸なら見っけたけど、妖怪は全然居ないみたいだぜ?リクオは見っけたのかよ」
「いや、さっぱりだよ! やっぱり妖怪なんていないんじゃないかな?」
奴良リクオ君は島君という男の子に、ペカーッと良い笑顔を向けた。
と、後ろから足音と共に「ふむ。ここには居ないようだね」と言う言葉が聞こえて来た。
この声は天然パーマの男の子の声だ。
島君は、私達の後ろに向かって「清継くん!」と声を上げる。
その名前にまたデジャブを覚えた。
なんだった? どこで聞いた?
清継。島。……それにカナちゃんに奴良リクオ君。
………
って全部今でも大好きな『ぬらりひょんの孫』の登場人物の名前だ!
1人や2人、同姓同名でも偶然として片付けられるけど、4人だ。
4人も同姓同名なんて有り得ない!
なんで!?
なんで、現実に漫画の人物が居るの!?
もしかして、夢!?
いや、この身体で12年間生きて来たので、それは有り得ない。
と、トリップと転生という言葉が、頭の中に過ぎる。
ネットで良く読んでいた夢小説の話し。
いやいや、ないないないっ!
頭の中で否定するが、そうとしか考えられない。
否定しきれない目の前の現実に私は、頭が真っ白になる。
だが、ふと、ある考えが浮かんで来た。
偶然が重なりに重なって、同姓同名が4人集まったのかもしれない。
うん。きっとそう!
私はその考えに深く頷いた。
だが、時間が経てば経つほど、私の考えは覆されて行く。
奴良リクオ君は、私とカナちゃんの手を繋がせると、先頭に追い付き不自然な行動を始めた。
給湯室の扉を開けようとする天然パーマの男の子。もとい清継君と、島君の行動を「なんか、喉が渇いちゃって…」と止める。
そして先頭の2人がトイレの中を覗こうとすると、先にトイレの中に入り何かをしていた。
これって、旧校舎編で妖怪を先に退治している話しとソックリだ。
い、いや、別の事しているのだと信じたい。
信じたいのに、はっきりとここが『ぬらりひょんの孫』の世界だと確証付ける事がこの後、起きた。