第3章 腹をくくりましょう
と、床に落ちていた古びたクロッキーを発見する。
それを拾うと私はパラリと捲った。
そこには風景画や石膏像の絵が描かれていた。
おお、陰影の付け方が上手いなぁ。この人美術部だったのかな?
ふーん、と感心しつつ見ていると、後ろで突然グシャッと何かが潰れる音と共に「モガッ」と蛙が潰れたような悲鳴じみたものが聞こえて来た。
ん? 何の音?
もしかして、幽霊!?
慌てて後ろを振り向くと奴良リクオ君がスタスタスタと早足にこちらへと向かって来る。背中にはカナちゃんをひっつけている。
「え?どしたの?何かあった?」
「うえ!? い、いや、なんでもない、なんでもないよっ!」
声を掛けると奴良リクオ君は、両手を振りながら、早口で否定の言葉を発した。
それにしては、なんだか様子が変だ。
思いっきり焦っている。
まるで、何かを発見したのに、それを誤魔化すような感じだ。
私は奴良リクオ君が歩いて来た方向へと目を凝らした。
でも暗くて良く見えない。
「有永さんっ、何もなかったから、向こう探してみようよ! ホラ、あっちにも妖怪が隠れてそうな棚があるし。ねっ!」
奴良リクオ君は、そんな私の右手を握ると足早に皆が居る方向へと歩きだす。
私はその慌てように、はて?と首を傾げた。
しかし、その疑問も握られた手の感触と伝わる温もりに霧散する。
え?え?え?なんで、手を!?