第3章 腹をくくりましょう
幽霊にも妖怪にも遭遇する事なく、怪しい箇所を通過した私達は、最後に残った教室に歩を進めた。
それは食堂だった。
って、言うか中学校に食堂が存在するなんて、珍しいなぁ……
もしかしたら、お昼休み学生がお弁当をここで食べてた?
いや、食堂って言うくらいだから、もしかしたら食事も出されてた?
そう思いつつ、2メートル先の入り口の上にあるプレートを見る。
と、先頭の清継君という男の子と島君という男の子が扉の前で会話を交わした。
「ここでラストっすね」
「うむ。ここに居てくれればいいのだがね…」
「きっと居るっすよ!」
島君が勢い良くガラッと扉を開ける。懐中電灯の灯りが室内を照らした。
「へえ、いい雰囲気っすね。清継君」
「そうだねぇ」
いい雰囲気って?
なんだか、その言葉に含まれる意味に背筋がゾクゾクしてくるんだけど、気の所為?
心臓がドキドキとしだす。でも、好奇心も沸いて来た。
ちょっとだけ、覗いてみよっかな?
私はカナちゃんと手を繋ぎながらも、扉の傍に寄り、ひょこっと中を覗いてみた。
室内を照らす光の中、一瞬見えたのは数人の人が教室の片隅で固まっている姿。
先頭の2人も何をしているのか、と首を傾げている。
と、私達の気配に気付いたのか、隅で固まっていた人々がこちらを向いた。
…、は…?
なんだか、男の人の歯が剥き出しになってる?
と、その人々は怖い顔をして襲って来た。
「うわぁぁああああっ!!」
「出たぁあああ!!」
清継君と島君がこちらに向かって逃げて来る。
何あれ、なに!?
信じられない光景に思考が真っ白となる。
と、立ちすくむ私の前に奴良リクオ君が立ち塞がった。
「カナちゃん、有永さん、逃げて!!」
逃げて来た清継君と島君は、私達をすり抜けて廊下を駆け去って行く。
「なに、何なの? 妖怪が出たの!?」
手を繋いでいるカナちゃんが、震える声で奴良リクオ君に問いかけた。
奴良リクオ君は、真正面のお化けと対峙しながら、清継君達が駆け去った廊下の向こうを指差した。
「早く逃げて!!」
奴良リクオ君の言う通り、逃げようとしても、足が強張ったまま動かない。
生まれて初めての経験に身体が委縮したのかもしれない。
迫りくる化け物達の形相に心臓が押し潰される程の恐怖に、ただただ目を見開く事しか出来なかった。