第3章 腹をくくりましょう
怖かったら、掴まってていいって……
そんな、滅相も無い!
男子の服に掴まるなんて、私的にありえない!
だって、だって……恥ずかしい!!
私は両手を横に振りつつ、首もぶんぶんっと横に大きく振った。
「大丈夫! 怖くないし! それに、悪いからいい、ですっ!」
私は、なんだか矛盾する言葉を発している事に気付かず首を振り続けた。
そんな私の様子に奴良リクオ君は、キョトンとする。
「カナちゃんも掴まってるし、もう一人くらい増えたってボクは平気だよ?」
「ホントに、だ、大丈夫!」
私は拳を握り締め、怖くない、という事をアピールした。
心の中で、せっかく親切で言ってくれてるのに、私のバカーッと嘆きつつ。
でも、でも、男子の服に掴まるなんて、ほんと恥ずかしいのだ。
ううっ、私の見栄っ張りーっ
「そっか」
奴良リクオ君は、私の返事を聞き、納得したように頷いた。
そして、また私達は、ギシギシと鳴る板張りの床を歩きだした。
私は神経を張り詰めつつ、皆の後に続いた。
先頭の天然パーマの男の子が、美術準備室とプレートの下がっている教室の扉を開ける。
「よーし、じゃあここからチェックしてみよう!」
懐中電灯で照らされた室内は、美術用具がそこらかしこに置いてあった。
壁際には、キャンバスが2つほど立てかけられている。
棚にはデッサン用の石膏像が数点。そして、床には壁や天井から剥がれたものがあちらこちらに散乱している。
推測だが、物がたくさん置いてあるので、もしかしたら隙間とかに妖怪が居るかもしれない、と思って入ったのかもしれない。
「皆、怪しいものはすぐボクに報告してくれ!」
天然パーマの男の子の言葉を相図に皆、室内へと散らばった。
あ、そう言えば、カナちゃんはどうしたんだろう?
キョロッと周りを見回すと、カナちゃんは奴良リクオ君の背中にしがみ付きながら、オドオドと室内を見回していた。
んー。奴良リクオ君とは仲良さそうだったし、慣れてる人の傍の方が安心出来るのかな?
そう推測しつつも、なんだか寂しさが胸の中に去来する。
私は、はあ、と小さく溜息をついた。