第9章 覚醒
狼狽する私に気付かず、奴良リクオは手を繋いだまま、校舎に向かって歩き出した。
私は意味の判らない身体の反応を取り敢えず無視する事にして、玉章に言われた事を再度思い返してみた。
仲間と認めて貰うには、奴良リクオを誑かさないといけない。そして、振る。
顔を上げチラッと目の前を歩く奴良リクオの背中を見る。
「………、ホント私に出来る?」
さっき頑張ろうと決意したのに、実際奴良リクオを前にすると、その気持ちが早くもグラつく。
と、言うか奴良リクオは私に誑かされてくれる?
いや、でも、玉章は奴良リクオが私の事好きって言ってたし…
ドクンと心臓が鳴り、何故か顔に熱が籠る。
いやいやいや、好きって、まさか、そんなハズないない!
ブルブルと首を振る。
どうやって、誑かすのかが問題。
でも……
顔に熱が籠り頭の中で色々な思考がグルグルする。
でも、答えは出ない。
と、前を行く奴良リクオが足をピタッと止め、こちらを振り返った。
「有永さん、どうしたの?」
「え?」
いつの間にか俯いていた顔を上げると、唐突に目の前がグルグル回る。
「あ、れ……?」
「有永さん!!」
そして意識が真っ白に塗り潰された。
なんで…?