第9章 覚醒
「親の敵に対する正義の制裁だ。悩む必要は無いだろう」
正義の制裁。
確かに。
私はコクリと頷く。
と、グラウンドの方から私の名前を呼ぶ声が聞こえて来た。
この声は、奴良リクオだ。
多分、保健室から消えた私を捜しているのだろう。
「優しいフリも大概にしとけばいいのに……」
そう呟くと、玉章は私の顎から手を離し小さく笑った。
「クッ……。有永舞香。楽しみにしてるよ…」
「う、まく行かないかもしれないかもだけど、頑張ってみる」
そう答えると、玉章は姿を現した時と同じように木の葉を自分の周りに渦巻かせ、そのまま姿を消した。
奴良リクオを嵌める、と言うか誑かす。
「私に出来るのかな? カナちゃんみたいに可愛ければ出来るんだけど……」
自信の無さから、溜息を一つ付く。
しかし、やらなければ、認めて貰えない。
認めて貰えなければ、敵への制裁は出来ない。
私はお腹に力を込め、腹を決めた。
やってみなければ判らない。
「ダメでもともと! がんばろ!」
私は拳をグッと握り締めた。