第9章 覚醒
なんで私の名前を!?
驚くが、すぐに納得する。
犬神が私の事を話してくれたんだろう。
でも、玉章は何故この中学校に?
訝しげに見ていると、玉章は腕を組んだ姿勢のまま眉を顰め、見返して来た。
「このボクに会えたんだ。もっと嬉しそうな顔をしたらどうなんだい?」
嬉しそうな顔?
なんで嬉しいと思わないといけないんだろう?
不思議に思っていると「馬鹿顔は止めてくれる?」と言われた。
「ちょ、馬鹿顔って何!?」
「言葉通りだよ」
不敵に言い放つ玉章に私は物凄く腹が立った。
「別に貴方に会えても嬉しくない!」
思わず口走る。
そして、すぐに我に返り、後悔した。
良く考えてみたら、目の前の妖怪は四国妖怪。
反感を買うような事を言ったから、もしかして仲間にして貰えないかもしれない。
でも、馬鹿にされたから、言い返したかったし…!
口を押さえながらぐるぐる考え込んでいると、面白そうな声音が耳に聞こえて来た。
「面白いね。ボクにたてつく女は久しぶりだ」
顔を上げると何故か玉章は面白そうにニヤリと笑っていた。
たてつく、女? どういう事だろう?
そういう女性は周りに居ないって意味かな?
と、私は、玉章の上に立つ者だけが持つ独特の雰囲気に気付く。
その事から、導かれる答えは、一つ。
目の前の王様のような青年に反論する女性はいない、という事。
「もしかして、四国妖怪の……幹部?」
思いついたことを口にしてみると、冷たい視線を浴びせられた。
玉章は皮肉げに唇の端を持ち上げる。
「幹部? このボクが? クッ……愚かだね。犬神から聞いてないのかい?」
徐々に玉章から凄まじい威圧感が発せられて来た。
その重圧に呼吸がしづらくなる。
背筋に冷や汗が流れる。
何、これ?
「……っ」
言葉を返しきれない私に玉章は顔に薄ら笑みを浮かべ、近付いて来た。
髪をグッと掴まれ、顔を上向きにさせられる。
そして、顔を近付けて来た。