第3章 腹をくくりましょう
旧校舎の中も外観と同じく老朽化していた。
板張りの廊下は、所々割れて剥がれている。教室の扉や窓も廊下側程割れてはいないが、ひび割れていた。
天井にはあちらこちらに蜘蛛の巣が張っている。
空気を吸い込むとカビっぽい臭いがする。
天然パーマの男の子の後ろに続く体格が小柄な男の子が口を開いた。
「人が出入りしてる雰囲気……ないっすねぇ」
「はっはっはっ、さっき通った道以外ここには来れないからね。危なくて誰も近寄らないさ!」
当り前。
誰も夜中に高速道路を横切って、ここまで来ようとは思わない。
小柄な男の子の言葉に続けた天然パーマの男の子の言葉に心の中で突っ込みを入れる。
と、暗闇のどこかで、ピチャン、ピチャンと水音が響いた。
思わず身体がビクッとなり、心臓が縮こまる。
何? 水、洩れ?
思わず周囲を伺ってしまう。
と、左斜め先。廊下に設置されたタイルに囲まれた手洗い場が見える。
きっとそこで、昔の学生達が手を洗ったり、お弁当の後歯磨きしていたのだろう。
ホッと胸を撫ぜおろす。
実は妖怪は信じてないが、幽霊はいると思っている。
だって、この身体になる前、霊感のある友達が居たから。
その友達が自分の体験談をたくさん話してくれた。
それを思い出し、背筋がゾクゾクとし始めた。
いや、私、霊感無いから見えない。見えない。
怖い事なんてない!
そう自分に言い聞かせながら歩いていると、後ろから奴良リクオ君が声を掛けて来た。
「有永さん」
その突然の呼びかけに、思わずビクッと身体を揺らし、「ひゃい!?」と間抜けな返事をしてしまった。
あわわわ、なんでこの口は、変な事をー!
口を押さえながらそっと振り向くと、奴良リクオ君はおかしそうにぷっと吹き出していた。
いや、変だったのは判るけど、笑わなくてもいーじゃないの!
内心、むっとしていると奴良リクオ君は、「ゴメンゴメン」と謝って来る。
そして、吃驚するような言葉を続けて言った。
「怖かったらボクに捕まってていいよ?」
え!?