第9章 覚醒
私とカナちゃん。そして清継君が疑問の声を上げる。
それに鳥居さんが頷いた。
「うん。この病院の近くに千羽様っていう神様を祀ってる祠があるんだ。おばあちゃんが良くお参りに行ってる神様」
と、清継君が目をきらめかせその話しに食い付いた。
「もしかして、伝説の千羽様の祠かい!? こんな所にあったなんて、知らなかったよ! さあ、みんな、さっそく行こうじゃないか! 巻さん、案内をしてくれたまえ!」
「嫌よー! あそこ、怖い妖怪出るんだからー!」
「それこそ聞き捨てならない!!さあ、巻さん。行くよ!」
「嫌ったら、嫌ー!」
「ちょ、ちょっと、2人共! 落ち着いて! ここ病室だから!」
行く行かないの攻防を続ける清継君と巻さんを奴良リクオがそれを止める。
私はこっそり、はあ、と溜息をつくと、窓の外を見た。
思い出すのは、さっき階段で清継君から言われたこと。
私がおじいさんを病院へ連れて行くって言っていた?
本当にそんな記憶全く無い。
なんで思い出せないんだろう?
縦長頭のおじいさん。
と、何か不気味な笑い声が頭の中に蘇って来た。
なに?
なんだか、言葉に表せない程の恐怖が沸く。
私は背筋をゾクッとさせながら、自分の腕をきつく握りしめた。
そんな私を奴良リクオが仲裁する手を止め、心配げに見ていたなんて、全く気が付かなかった。