第9章 覚醒
その日の放課後、清継君の提案により浮世絵総合病院へ鳥居さんのお見舞いに行くことが決まった。
昨日、日曜日に鳥居さんが緊急入院したらしいのだ。
「先週、元気だったのに……。何かあったのかな?」
「そうね。鳥居さん、大丈夫かしら?」
カナちゃんは心配そうに顔を曇らせる。
私はそんなカナちゃんの顔を見ながら、頷いた。
今、私達はバスに揺られながら浮世絵総合病院へ向かっている。
隣にはカナちゃん。
そして前の席には何故か、お母さんの敵の孫、奴良リクオと及川さんが並んで座っていた。
及川さんは、奴良リクオのお付きの妖怪、雪女だ。
雪女は、奴良リクオにピッタリくっついている。
そして、何故か私にチラチラときつい眼差しをぶつけて来ていた。
多分、私がぬらりひょんの敵、雷獣の娘だからだろう。
と、奴良リクオは、突然振り向き私達の会話に割り込んで来る。
「き、きっと、疲れでも溜まってたんじゃないかな? ホラ、この前初めての中間テストもあったしさ!」
私は、眉を顰めながら奴良リクオの顔を見る。
しかし、不思議そうに首を傾げられた。
私が敵意を持っている事が通じないらしい。
そんな奴良リクオの言葉に、カナちゃんは言葉を返した。
「そうよね。でも、7月になったら期末テストだそうよ?」
鳥居さん、大丈夫かしら? と心配そうに表情を曇らせる。
しかし、奴良リクオは、カナちゃんに安心させるように笑顔を返した。
「きっと大丈夫! 元凶は居なくなったしね!」
「え?」
「とっ、な、なんでも無いよ! は、ははは……」
元凶?
引っ掛かる言い方に私は胡乱げな視線を送った。
奴良リクオは視線を逸らしつつ、頬に冷や汗を流し誤魔化し笑いを続けている。
何か知ってる?
問い詰めるようにじっと見ると、私の視線に気付いた奴良リクオは、何故かバッと前を向ききちんと席に座り直した。
そんな奴良リクオに、隣に座っていた雪女の及川さんが声を掛けた。