第9章 覚醒
『ぬらりひょんの孫』ファンの血が騒ぎ出す。
私でなくても、同じ立場の人ならば確実に知りたい事柄だと思う!
でも、今は我慢!
私は両拳を握りながら自分の暴走しそうな心を押さえ、続きの言葉を待った。
「舞香も時期が来れば必ず覚醒するじゃろう。必ずじゃ。あやつの子でも出来た事じゃしの」
そう言いつつ、お母さんは艶然と微笑んだ。
そして、その後少し学校の出来事などを話し、お母さんは部屋を出て行った。
なんだか、言葉の端々に対抗心が見えたけど、奴良リクオ君のお祖父さんと何かあった?
考えても判らない。
でも、要約すると、お母さんにも私が変身するのか判らないって事だよね?
ふいに奴良リクオ君の姿が頭に浮かんで来る。
また胸の奥がツクンと痛んだ。
好きになっても仕方の無い人。
決まっている出来事は変えられない。
忘れる。
忘れないといけない。
と、『忘れるには、他の人を好きになるのが一番』と誰かが言っていた言葉を思い出す。
そうだ! 恋心を忘れるには、新しい恋をする事が一番かもしれない!
でも……
「どうやって他の人を好きになればいいんだろ?」
奴良リクオ君の事、どうやって好きになったのか判らない。
気がついたら、好きになってた。
「うーん……」
私は、誰に相談すべきか判らず、頭を抱えた。
そんな私を窓の外からじっと見ている夜リクオ君に気付かなかった。