第9章 覚醒
……ん? でもちょっと待って? 確かお母さんが雷獣っていう妖怪って事は、私にもその血が流れてるワケで……
お母さんに聞けば、もしかしたら妖怪として力が振るえる?
でも、そう考えると人間以外のモノになるという怖さが沸いて来る。
力になりたい。でも……
うーん、と考え込んでいると、隣に居たカナちゃんが悲鳴を上げながら、しがみついて来た。
「どしたの!? カナちゃん!?」
「あ、あ、何か湿ったものがペロッって……っ」
「湿ったもの?」
ふい、と顔を上げるとカナちゃんが居た場所に、青年と同じ制服を着た少年が立っていた。
髪型を整えていない所為かボスの玉章よりも幾分若く見える。
そして犬のように舌を長く伸ばしていた。
この人、犬神!?
背中がゾクッとする。
人間の姿をしていても、妖怪。しかも、人間に敵意を抱く妖怪!
私はカナちゃんに抱きつかれたまま、思わず後じさった。
すると、犬神は私をじっと見つめると目を少し細めニヤリと笑った。
「今のは挨拶じゃ。おんしも獣じゃろ。なら玉章につくぜよ」
その言葉にドキッとする。
なんで私が獣って!?
もしかして、嗅覚が発達してるから、私の身体から妖怪の匂いでもする!?
手に汗をかきながら見返していると、犬神もクルリと背を向け、手を上げた。
「ははは。まだ人間に騙されちょるのう。まあ、人間と仲良しごっこが終わったら来るぜよ。じゃあな」
人間に騙されてるってどういう事?
意味が判らない。
「舞香、ちゃん……どういう事?」
「わ、かんない……」
震えながら尋ねて来るカナちゃんの身体を支えながら、私は小さく首を振る。
そして去っていく2人の背中を見ていたら、いつの間にか深く傘を被った人達が玉章の後ろに加わっていた。
多分、幹部の妖怪達だろう。
私は、前方に居る奴良リクオ君を見た。