第9章 覚醒
うーん……。念の為に、奴良リクオ君に近付かない方が安全…?
だがそう考えた途端瞬時に、嫌だ、という想いが沸き出て来た。
え? なんで?
眉を顰めて考えていると、突然奴良リクオ君から名前を呼ばれた。
「有永さん」
「はい?」
顔を上げると、右肩に手を置かれた。
驚きで頭が真っ白になった。
そして心臓がバクバクし出し、触れられた箇所から奴良リクオ君の手の平の体温が、身体中に広がって行った。
何故か触れられてるのが、恥ずかしい。
うわわわ、手、て!
脳内でプチパニックに陥っている私に構わず奴良リクオ君は、心配そうに口を開いた。
「大丈夫? 難しい顔してるけど、何か困ったことでも起きた?」
私は、思いっきりブンブンと首を振る。
ないですっ!
「そっか。それなら良かった…」
奴良リクオ君はホッとしたような顔になる。
その表情に、今度は胸の奥がキュンと締め付けられる感じがした。
な、なんだろ? 胸の奥が甘くてちょっと痛い…
と、奴良リクオ君の隣に居た氷麗ちゃんが声を荒げて割り込んで来た。
「2人とも! 距離が近過ぎですっ!」
へ?