第9章 覚醒
「あ、あのさ!」
突然話しかけられたので、私は面食らって目が丸くなる。
「は、はい?」
「あの……ボクが、ごめん」
「え?」
どういう事だろう?
首を傾げていると、奴良リクオ君は慌てたように両手を振った。
「いや、判らなかったらいいよ! 忘れて!」
「う、うん?」
取り敢えず返事を返してみたけど、奴良リクオ君の言葉が意味不明で、とても気になる。
心の中で、うーん?と考えていると、窓際の清継君が喜色満面の顔で声を上げた。
「よしっ、出来たぞ! 諸君、これを見てくれたまえ!」
私達は、清継君の周りに集まり、手元を覗き込んだ。
手元のノートパソコンの画面には、日本列島各地に火の玉のようなイラストが描かれていた。
画面の左上には、円グラフが表示されている。
「これって?」
清継君の右側で氷麗ちゃんと一緒に並んで覗き込む奴良リクオ君が、問いを発した。
それに清継君は、得意げな表情で答えた。
「これは『全国妖怪分布図』さ! 化原先生との共作だよ! いいかい、こうすると……。ほら、棒グラフにも出来るんだよ!」
カチャカチャとキーボードの上で指を動かす清継君。
左側で鳥居さんと一緒に並んで覗き込む巻さんは怪訝そうに画面を見る。
「京都、めちゃ多くね?」
「巻、四国も多いよ」
鳥居さんが気付いたように、画面を指差した。
私は清継君の後ろで画面を見つつ、ふーん、よく集計したなぁ、と思っていたのだが、ふいにデジャブを覚えた。
あれ? この場面…。どこかで見たような?
確か、確か……
「あっ!」
思わず声を上げると、目の前に居る清継君がくるっと振り向いた。
「どうしたんだい? 有永さん?」
「あ、いや、なんでもない、です。はい…」
慌てて首を横に振る。
そして私は清継君の後ろから再びノートパソコンの画面を見つつ、確信した。
原作で四国編のはじまりの方に描かれていた、清継君が日本地図をみんなに見せる場面。
これがきっとそう。
これから、四国編が始まるんだ……
確か、四国編の内容は、四国妖怪の玉章が己の野望の為に、奴良組の縄張りである浮世絵町に攻めて来る話しだった。
……。組同士の戦いだし、今回は、巻き込まれないと思うけど、巻き込まれたら、絶対戦えない!
死亡確定だ!
いやだ! まだ、死にたくない!