第3章 腹をくくりましょう
私の心中も知らず、お母さんは、夜間外出の危険性をとくとくと話し始める。
項垂れながらお母さんの言葉を聞いているが、外出出来なかったらどうしよう、とぐるぐる感でいっぱいだ。
と、お父さんが私の肩をポンッと叩いた。
ん?
私がお父さんの方へ顔を上げると、お父さんはお母さんを優しげな目で見つめながら、宥めるような優しい口調で、口を開いた。
「まあまあ、芙蓉。心配なのは判るけど、そんな頭ごなしにダメだと言ってはいけないよ?」
「じゃが…!」
「舞香。旧校舎には誰と一緒に行くんだい?」
お父さんは反論しかけるお母さんを柔らかい微笑で制すると、私に話しかけて来た。
「えっと、女の子の友達と……。あ、集合場所についたら、多分、別の子達も来るよ!」
お父さんは「そうか」と頷き、私の頭にポンッと大きな手を乗せる。
「じゃあ、僕が車で集合場所まで送って行ってあげるよ。帰りは電話するんだよ?」
「わ!お父さん、ありがとう!」
喜びの声を上げると、お母さんは反対に恨みがましい声でお父さんへと口を開いた。
「おぬしは、甘すぎじゃ……っ 何かあったらどうするのじゃ!」
「芙蓉。子供を信じてあげるのも親の役目だと思うよ。ね。」
優しい笑顔を向け続けるお父さんにお母さんは深い溜息をつく。
そして、しぶしぶ折れた。
お父さん、最高!
その後すぐ、お父さんの車にいそいそと乗り込むと、カナちゃんの待つ駅へと向かった。