第9章 覚醒
項垂れた私は、心配するように様子を伺って来るカナちゃんと一緒に、今日の活動拠点である会議室へと足を運んだ。
清十字怪奇探偵団は4月に発足したばかりなので、部室が無く、活動は発起人である清継君のクラスや屋上、そして空いている会議室等に集まるようになっている。
ガラリと会議室の扉を横に開けると、清継君、巻さん、鳥居さんが居た。
清継君は窓際の長机にノートパソコンを開き、何か打ち込んでいる。
巻さんは、清継君の後ろで椅子に座り、足をブラブラさせながら何かの雑誌を読んでいた。
そして鳥居さんは、両手を上げ腰を捻った状態で、ゆっくり前進運動をしていた。それはゆらちゃんから教えて貰ったものだった。
その顔は真剣そのものだ。
どうしたんだろ? 妖怪を見たとか?
そう思っていると、隣に居たカナちゃんが巻さんに問い掛けた。
「ねえ、鳥居さん、何やってるの?」
「あー、鳥居? 今朝さぁ、電車の中で痴漢に胸触られてさ。それで防衛意識が高まったみたい」
「「痴漢!?」」
私とカナちゃんの声がハモる。
それは、すごく嫌な思いをしたに違いない!
だって、想像しただけでも、気持ち悪いっ!
「だ、大丈夫だったの!?」
カナちゃんが心配そうな顔で言葉を続けると、巻さんは自慢げに髪を掻きあげた。
「大丈夫。私が速攻、駅員に突き出してやったわ!」
「流石、巻さん!」
「凄いわ! 巻さん!」
私とカナちゃんは、パチパチと拍手をしながら称賛の声を送る。
するとふいに、また後ろで扉が開かれる音がした。
振り返ってみると、氷麗ちゃんを連れた奴良リクオ君が辿り着いたところだった。
「あ、良かった。まだ会議始まってないみたいだ」
「若……、ではなく、リクオ君。今日は何の会議なんですか?」
「さあ?」
安堵の息をつく奴良リクオ君に氷麗ちゃんは興味深げに尋ねる。だが、内容を知らされていないのか奴良リクオ君は首を傾げた。
うん。私も内容知らないよ。
くっ、会議さえなければ限定ドリンク飲めたのにっ!
と、ふいに奴良リクオ君と目が合った。
何故だか気恥ずかしくなり、ちょっと視線をずらす。
すると、奴良リクオ君はツカツカと歩み寄って来た。
そして私の前で足を止めると思いきったように口を開いた。