第9章 覚醒
カナちゃんの誕生日から2日経った25日の朝。
いつも通り浮世絵町駅で電車を降り駅のホーム内を歩いていると、明らかに奇妙な集団が数メートル先を歩いていた。
まずは金に見える髪を首筋まで伸ばした着物姿の男性。そこまでは普通に見えるのだが、この男性はもうすぐ7月になろうとしているのに首に黒いマフラーを巻き、ワンレンズ型サングラスを掛けていた。ハッキリ言って着物姿にミスマッチなサングラス姿だ。
そしてその横に居る女性は、緩やかなウェーブの掛かった髪を後ろの高い位置で括っている。惜しげも無くナイスなボディを煌びやかなドレスに包みこませていた。胸のラインがクッキリ出せるドレスだ。腕にはフワフワした白い毛のついたストールを巻いている。
って、あの顔は、奴良家に訪問した時にお茶を出してくれたお姉さんだ。
そのお姉さんの横に居るのは、ストライプ生地のスーツに身を包み、長い黒髪を後ろで一くくりにしているお兄さん(?)だった。
この人もサラリーマン姿に長髪はミスマッチだ。
そんな奇抜と言うか奇妙な3人を引き連れ中心となり先頭を歩いているのは、夏の制服を着た奴良リクオ君だった。
奴良リクオ君の隣には、冬の制服を着、マフラーを巻いた氷麗ちゃん。
そしてそのすぐ後ろに、背が高く厳つい顔の男の人とヘッドホンをした小柄な少年が並んで歩いていた。
それはとても目立つ集団だった。
周りを歩く人達は、皆、ちょっと引き気味な表情をしながら、避けて通っている。
私もあの集団の中の奴良リクオ君に、声を掛ける勇気は無い。
奴良リクオ君……。よくあの中に居られるなぁ……
あ。それとも目立ってる事に気付いてないのかな?
そう思いつつも、あのお茶を出してくれたお姉さんが居ると言う事は、全員奴良組の妖怪なんだろうな、と言う事が推測出来た。
それに奴良リクオ君に付いて来ていると言う事は、きっと皆護衛なんだろう。
でも、なんであんなに護衛付けてるんだろ?
原作では氷麗ちゃんと青田坊さんだけだったハズなのに?
不思議に思いつつも、私は何が起こっているのか想像をしなかった。
こんなにも早く四国編に突入するなんて思わなかったから。