第8章 カナちゃんの誕生日
うわーっ、は、恥ずかしいっ!
私は慌ててスケッチブックを奪い取ると、首を横に振った。
「これは、ただの落書き! あっ、そうだ! なんで私の部屋に現れたの?」
話題を変えるように私は疑問をぶつけた。
スケッチブックを突然奪われキョトンとした顔をしていたよるリクオ君は、私の言葉を聞くと小さく唇の端を持ち上げ、腕を組みながら勉強机に備えてつけられている椅子に座った。
「散歩」
って、散歩で私の家に寄るわけない。
何か理由があるはずだけど……。
聞きたいことがあるとか……?
あ! 聞きたいことと言えば!
私は連絡の取れないカナちゃんの事を思い出した。
「あのっ! カナちゃんと連絡取れないんだけど、カナちゃんに何かありました?」
「ああ、家で寝てるぜ」
寝てる……? そ、なんだ……
なんだか、安心感で肩の力が抜ける。
それと共に余計な心配してたんだなぁ、と自分に対して苦笑いを零した。
そんな私を夜リクオ君はじっと見つめた。
ん? ご飯粒とか顔についてる?
私は思わず口の回りを拭う。
すると夜リクオ君は静かに口の両端を上げた。
「有永サンは相変わらず面白ぇな。そう言やぁ遅くなったが数珠、役に立ったぜ。サンキュ」
その言葉にドクンッと心臓が大きく音を立てて跳ねる。
なぜか脈も早くなる。
「あ、や、う、うん。役に立てて、よ、良かった、です」
しどろもどろの言葉が口から飛び出す。
どうしたの! 私ーっ!