第8章 カナちゃんの誕生日
私は慌ててガラス窓を開けると夜リクオ君は遠慮無しに、ひょいっと部屋の中に入って来た。
そして、部屋の中を珍しげに見回す。
「へぇ。随分可愛い部屋じゃねぇか」
私はその言葉に顔が真っ赤になった。
本棚のカーテンはフリルをあしらったもの。ドアノブもフリルがついている。
そしてカーテンの内側も薄い繊細なレースを掛けていた。
もちろんスタンドも可愛いフリル型だ。
極めつけはもちろん大きなうさぎのぬいぐるみ。
フリルをたくさん付けたドレスを着せているのだ。
そう。部屋中真っ白な可愛いフリル尽くし。
「こ、これは、お母さんの趣味、です」
私は慌てて弁解する。
だって私はもっとシンプルなものが好きだ。
と、夜リクオ君は意外そうな顔で私を見た。
「へえ。あのお袋さんがかい?」
「うん」
私はコクコク頷く。
と、夜リクオ君は置いてあるものをしげしげと見てはそれを手に取る。
って、なんで、物色!?
驚きながらも夜リクオ君の行動を追っていると、ふいに夜リクオ君は机の本棚の上から一冊のスケッチブックを見つけ出し手に取った。
それは確か以前、前世で住んでいた場所が懐かしくて、その風景を思い出しながら描いたものだった。
こう見えても、スケッチだけは得意なのだ。
色塗りは下手だけど!
でもまあ、普通の風景画だから見られても変な所は無いだろう。
そう思っていると、珍しげな顔でパラパラとページを捲っていた夜リクオ君の手が止まった。
そして「オレ?」と呟いた。
ん?
首を傾げている私に、夜リクオ君は不思議そうな顔をしながらスケッチブックのあるページを広げ、問いを発した。
「これはオレかい?」
「え?」
そのページを見ると、顔は似てないがメガネをかけた昼リクオ君と長ドスを構えた夜リクオ君の姿が描かれていた。
それは転校前、この世界に『ぬらりひょんの孫』の漫画が置いてなくて欲求が溜まり、我慢できなくなって描いたものだった。