第8章 カナちゃんの誕生日
私一人で帰ると言いたいのかもしれない。
上目使いで私を伺うように見ている。
大きな目が可愛い。
カナちゃん、きっと自分の所為で私が怒られる事を気にしてるんだ。
気にしなくてもいいんだけど、きっと遠慮するんだろうな。
そう思った私は、夜リクオ君にペコッと頭を下げた。
「ごめんなさい。駅までなら一緒に帰れるんだけど、私、カナちゃんの言う通り遅くなるとお母さんがすごく心配するんです。だから、送れないんです」
と、清継君達の顔が頭に浮かんだ。
あ! そう言えば、まだ学校に居るはず!
「カナちゃん、きよ……「仕方ねぇ。送ってってやる」
清継君達に送ってって貰えばいいと思う、と言おうとすると同時に夜リクオ君がカナちゃんに言葉を掛けた。
あれ? あれ?
妖怪姿じゃ一緒に電車に乗れないから、私に頼んだんじゃないの?
疑問に首を傾げつつ2人を見ると、夜リクオ君は再びカナちゃんを横抱きにし、入口とは反対側にある窓枠に足を掛けた。
そしてこちらを振り返ると小さく笑い「じゃあな。有永サン。気をつけて帰るんだぜ?」と言い残し、そのままカナちゃんと共に窓の外へと姿を消した。
え!? ここ2階!
慌てて窓枠に駆け寄り外を見るが、真下には誰も居なかった。
姿を突然消した2人に対し、少し不安になり周りを見回す。
2人はどこ?
目を凝らして探すが、一向に見つからない。
夜リクオ君がついてるから、きっと大丈夫だと思うけど……
しばらくして探すのを諦めた私は、不安を胸に帰途についた。