第1章 幼馴染み
ー梨沙sideー
私の部屋のベランダと圭太の部屋のベランダは、もの凄く近い。
だから、わざわざ下に降りて行かなくても、自分の部屋から圭太の部屋にすぐに行ける。
着ていたパジャマを脱ぎ、制服に着替える。
私達は、夏目高校に通う華の高校1年生。
って言っても、後少しで2年生になる。
季節は2月。まだまだ寒い。
夏にはポニーテールにする髪も、この寒い季節には下ろす。
マフラーを首に巻いて、手袋もしっかり手に嵌める。
梨沙
『圭太は、この事、もう覚えてないのかな…?』
小さい頃に圭太がくれた、綺麗なブレスレット。
それは10年経った今でも引き出しの中に大切に閉まっている。
梨沙
『いってきまーす!!』
下にいる家族にそう言い残し、ブレスレットを引き出しの中に戻してベランダに出た。
周りから見れば可笑しな光景だが、私にはこれが普通。
梨沙
『圭太~!』
すでに制服に着替えていた圭太は、私を見るなり呆れた顔をした。
圭太
「お前、いい加減そっから入ってくるの止めろよ。危ねーだろ。」
梨沙
『大丈夫だもん! 平気だもん!』
圭太
「はぁ…。」
溜め息を吐いた圭太は鞄を持って下へ降りて行った。