第4章 お向かいさん。
ー梨沙sideー
まさか圭太の口から、こんな嬉しい言葉を聞けるとは思わなかった私は、思わず泣いてしまった。
驚く圭太を横に、私は嬉しさでいっぱいだった。
梨沙
『よ、良かった…また、〝嫌い〟って…言われた、ら、どうしよう、かと思っ、たぁ~』
途切れ途切れに言う私に、圭太は「そんな事で泣くなよ…」と、半ば呆れながらも、クスッと笑い、私の頭を優しく撫でてくれた。
圭太からしたら〝そんな事〟でも私からしたら、〝とても不安だった事〟で…
それが今、圭太の〝旨い〟って言葉以外にも、おばさんが作るよりも美味しいって言われたから、歓喜で満ちてしまって、それが涙として出てきてしまったのだ。
圭太
「ほら、泣いてないで食えよ。」
梨沙
『うん…グスッ』
鼻声になりながらも返事をし、作った肉じゃがを口に入れた。
その肉じゃがの味は、ほんのり甘く、だけど私の涙で少しだけ、しょっぱかった。