第4章 お向かいさん。
流石の私でも、軽く入られるのは好ましく思わず、つい少し脅すような言い方をしてしまった。
それでも彼は「丁度体も鍛えたかったし…それに、元々空手をやってた黒兄を見て、俺も一度やってみたいとは思ってたんだよね」と言って片手を前に突き出した。
その拍子に真樹斗の持っていた物が、腕を突き出した衝撃で傾いた。
慌てそれを持ち直す真樹斗に問いかける。
梨沙
『真樹斗、それ何?』
真樹斗
「あぁ、これ? 母さんに『ご近所さんに渡しとけ』って言われてさ。」
そう言った真樹斗は、持っていた物を圭太に渡すと、
「そんじゃ、今日はこれ渡しに来ただけだから、そろそろ戻るわ。」と言って、手を降りながら向かいの家に入って行った。
梨沙
『本当に向かい側なんだ…』
圭太
「そうみたいだな。」
私の呟きに圭太が言葉を返す。
お腹が空いていたのを思いだし、私はまた冷蔵庫の中を漁り、入っていた具材で肉じゃがを作った。