第2章 昔ばなし
エレナが夕飯を作っている間、燐と雪男は学校で出されたであろう宿題に取りかかっていたが、始めてすぐに燐が喚き始めた。
燐「っだあぁぁ!もうっ、わっかんねぇーー!!」
頭をかきむしりながら大声を出す燐を、斜め前に座っていた雪男が困ったような表情で宥めようとしていた。
雪男「ちょ、兄さんっ!落ち着いてよ……僕がわかるとこなら教えるから…!」
そんな二人の様子をエレナの横で料理のつまみ食いやセクハラ(←毎度、撃墜済)をしていた獅郎が、大袈裟にため息をついた。
エレナは料理を作る手を止めずに、ちらりとその男を見た。
獅郎はそんな目線に気づくと肩をすくめ、参ったなぁ、と呟いた。
「くすっ……燐は相変わらずね。」
獅郎「本当、死ぬまであれなんじゃないかと思うと卒倒しそうだぜ…。………だから、慰めて?エレナちゃん♡」
目を瞑り口を尖らせ近づいてくる獅郎に、エレナは近くにあった茄子を掴むと柔らかな獅郎の唇に押し付けた。
すぐに、見開かれた目は茄子を視界に映すと、バッと顔を離し、キッとエレナを睨み付けている。
獅郎「何で茄子!?俺はお前のえろい唇を期待してたんだぞ!?ひどいっ鬼畜っ!!尊敬し愛してやまない師に対する態度か!?」
捲し立てたように詰め寄ってくる獅郎に再び視線を送ると、エレナは、はぁ、とため息をついた。
そして、燐たちがこちらに気づいていないのを確認し、隣で抗議する男の襟元を掴み、引き寄せる。
獅郎「____ちょっ、んっ!!」
重なった唇はすぐに離れ、エレナは何事もなかったかのように調理に戻り、残された獅郎は少しの間呆然と固まっていたが、すぐに息を吹き替えし、目には見えないハートを大量に飛ばしながらすごい勢いで抱きついてきた。
獅郎「エレナ~~~~~っっっ♡♡好きっ♡ラブッ♡ヤらせr(自主規制)♡」
頭をすり寄せながらぎゅうぎゅうと抱きついてくる獅郎に呆れつつ、その背中をポンポンと叩く。
「そろそろ落ち着いてくださいね?……44歳」