第2章 昔ばなし
「このお店ね、創作和食が基本でお料理も美味しいんだけど………ここにある日本酒も美味しいのよ?」
柔造「へぇ…そうなんか!楽しみやな~」
たどり着いた先は木造のモダンな佇まいの小洒落たお店で、店内もゆったりとした造りになっており、柔造はキョロキョロと店内を見渡しながらエレナのセンスの良さを感じていた。
店員「こちらのお部屋でございます。」
店員が案内した先にあったのは、大きめのソファが置かれた少し暗めな照明の付いた洋風な個室。
入り口には扉が付いており、閉めると中が見えない造りになっている。
柔造(個室、か………。……俺、我慢出来んのやろか…………)
入り口に立ったまま動かないでいる柔造を不思議に思ったエレナが彼の顔を覗き込むと、それに気づいた柔造がにこりと微笑みを返した。
「…………柔造?」
柔造「………何もあらへんよ。ほな、エレナ奥座りいや。」
「……?うんっ」
並んで座るタイプのソファの奥側にエレナが座ると、そのすぐ隣に柔造が腰を下ろす。
自然と近づいた距離。
微かに触れ合う肩に意識がいってしまう柔造だったが、一方のエレナはというと、あまり気に止めた様子もなく楽しそうにメニューを眺めていた。
「うーん。お腹空いてるからどれも美味しそう…。柔造は何食べたい?」
柔造(……もぉちょい、意識してほしいんやけどなぁ……。ま、この姿も可愛えんやけどね。)
柔造は今もメニューに釘付けなエレナを横目で見ながら、あることを思い付く。
柔造(試してみよか……)
柔造「そうやな~。俺は取り合えず焼き鳥やろ?………あとは、卵焼きと___」
そう言いながら柔造が少しずつ顔を近づけていく。
すると、すぐ近くにあった彼女の顔がほんのりと赤に染まる。
柔造はその事に気づいていないフリをしながら、さらにエレナの背中側の座面に手をつき、自分の半身と彼女の体が重なるように密着させた。
さらに近づいた距離。
柔造が話す度に耳を掠める熱い吐息に、エレナの心臓はトクトクと拍動を速めていく。