第2章 昔ばなし
「獅朗っ!どうしたの?」
エレナは突然現れた獅朗に駆け寄ると、不機嫌そうに職員たちを睨み付けるその顔にそっと手を伸ばし、触れる。
「……こら。怖い顔になってるわよ?」
自分の頬に触れるエレナの手に自分の手を重ねながらゆっくりと視線を彼女へと向けた。
獅朗「……ったく。お前は本当に………はぁ………全く、目が離せねぇなぁ。」
獅朗はエレナの手を掴むとそのまま自分の方へと引き寄せ、ふわりとその体を抱き締めると、彼女の細い肩に顔を埋めた。
スゥーと鼻で息を吸うと、エレナの花のように甘い香りが鼻を掠める。
「……もう!これじゃあ、準備出来ないでしょう?また夜に…………あ、ダメだわ。予定があるんだった。」
獅朗「あ?予定だぁ……?何だそれ。」
エレナの言葉にあからさまに機嫌を悪くした獅朗は、彼女の体を抱き締める腕に力を籠めた。
「さっき廊下でね、柔造___あ、京都支部の志摩柔造に会ったの。彼と会うのも2年ぶりだし、今夜夕飯を一緒にしようと思って。だから__」
獅朗「駄目だ。……百歩譲って飯行くのは許してやるが、夜は俺んとこに来い。…………絶対だ。」
自分の目を真っ直ぐに見つめている獅朗の瞳には怒りが灯り、今まで彼女に向けられることのなかった黒々とした思いが渦巻いているようだった。
突然の獅朗の変貌に動揺したエレナは、思わず視線を逸らしてしまう。
獅朗「………おいこら。目……逸らすんじゃねぇよ。」
ぐい、とエレナの顎を掴み、無理矢理視線を合わさせると、獅朗はそのまま彼女の柔らかな唇へ噛みつくようにキスをした。
「____んむっ!」
教室内にいた椿と他の数名の職員たちの視線が一斉に二人へと向けられる。その顔は皆一様に、目を見開き、唖然としていた。
椿(なっ///!?ふ、藤本上一級祓魔師が……桧山さんに、キ、キスしてるっ!?!?)
そんなことはお構い無しに獅朗は角度を変え、更に深まっていくキスにエレナの息は上がり、立っているのがやっとなほどであった。
「んっ………はぁ…………んんっ///」
椿/他、職員(………う、羨ましいっ///)