第2章 昔ばなし
少し不安そうな顔で柔造を見つめるエレナの柔らかな髪に触れながら、柔造は微笑みながら囁く。
柔造「………見惚れてもうて、集中でけへんやろ?」
「___っ///!……もう、そんなこと言われても採点緩くならないからね。」
頬を染め視線を逸らすエレナの姿に少しでも自分のことを意識してくれているのか、と期待を抱く柔造が、彼女の髪にキスを落とした。
柔造「……………そら、残念やわ。」
「…………でも、ちゃんと見てるから………格好いい姿、見せてね?」
自分を覗き込んでくる大きな瞳に、柔造の顔が映る。
柔造(その瞳に映るもんが、俺だけならええのんになぁ)
椿「ごっほん!…… 桧山さん、そろそろ打ち合わせの時間になりますぞ。」
そんな二人の甘い空気を容赦なく壊していく椿の言葉。
柔造は名残惜しげにその髪を手放し、ポンポンとエレナの頭をなでる。
柔造「………せっかくやし、夜、飯食いに行こうや。……俺ここら辺わからへんし、お店任せるさかい。………頼んだえ?」
笑顔を見せる柔造にエレナも同じように笑顔を返し、大きく頷いた。
「………うん。楽しみにしてるね!………じゃあ、また、後でね?」
椿に連れられ教室内へと入っていくエレナを笑顔で見送っていた柔造は、そのドアが閉まると同時にその場へしゃがみこんでしまった。
柔造「……………………ほんま……アカンなぁ////」
柔造(……………ほんま、どうしようもなく好きなんや。……もう、抑えられへんよ。)
そのまま暫くの間、動けずにいた柔造とは、反対にきびきびと試験の準備や打ち合わせを進めるエレナは誰が見ても分かるほどに上機嫌な様子だった。
職員1「………桧山上一級祓魔師、何か良いことでもあったんですかね?」
職員2「…さあ?でも、確かにあの方はいつも笑顔だけど、今日は更にニコニコしてるよな……」
ひそひそと話す試験の準備をしていた職員の後ろに立つ不機嫌丸出しで仁王立ちする獅朗。
獅朗「……おい、お前ら。人のオンナのことを厭らしい目で見てんじゃねぇ。」