第2章 昔ばなし
「………じゃ、試験会場のセッティングしてくるわ?………またあとでね、獅朗?」
熱を帯び、なおも深く重なりそうになる唇に手を添え、離れるエレナ。
そんな彼女に不満たらたらな様子の獅朗はガシガシと頭を掻き、舌打ちをする。
獅朗「…チッ。久々に会ったっつーのに、冷てぇなぁエレナは……今晩、覚悟しておけよ?」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる獅朗が、掴んでいたエレナの掌の甲をぺろりと舐め上げる。
「___ひあっ///!?~~~ちょっと!獅朗っ///」
獅朗「くくっ……味見だ。味見。………んじゃ、またあとで、な。」
(もうっ獅朗ったら………///)
獅朗の突然の行動により、速まってしまった心臓を押さえながら去っていくその後ろ姿をしばらく見つめていたエレナだったが、ハッと自分の仕事を思いだし、足早に会場となる教室へと向かった。
______
(確かここが会場の教室………)
教室の扉を開けるべくエレナが取っ手に手を触れた時____
?「_____エレナ………?」
名前を呼ぶ声の方へと顔を向けると、そこに立っていたのは懐かしさを覚える相手。
「_____柔造っ!!」
駆け寄り近づくと、記憶の中の彼より少しだけ大人の雰囲気を漂わせる"柔造"こと、志摩柔造がそこにいた。
柔造「まさか、こんなとこでエレナに会えるとは思わへんかったら、びっくりしたわ。……………見ぃひんうちに、またえらい別嬪さんになったなぁ。」
ニカッと笑う優しい笑顔は昔のままで、その懐かしさにエレナの胸が熱くなる。
柔造はエレナの頭を優しく撫でながら、愛しげな瞳で目の前の彼女を見つめている。
「……ふふ、柔造ったら。でも、柔造も前にも増して格好良くなったね。………本当に2年ぶりくらいかしら?」
柔造「2年かぁ………お前はどうか知らんけど、俺はえらい寂しかったんえ?」
エレナの頭を撫でていた柔造の手がするりと降りてきて、エレナのあごをくい、と上げる。
重なる視線。
ドクンドクン、と脈打つ体。