第2章 昔ばなし
「…………ふふっそうね。ある意味当たってるわ?」
エレナの言葉にピクリと眉を上げる獅朗だったが、眼に映る彼女の朗らかな笑顔に一瞬見惚れてしまった。
獅朗「__っ///!………な、何だよ。"ある意味"ってよ。」
「……だって、祓魔師としての貴方は、他の誰よりも気高く強い………いつまでも、私の憧れの存在だもの。…………ある意味、男女の恋愛感情よりも何倍も尊い気持ちなのよ?」
獅朗「………だぁっ!もう、お前ってやつはぁあ~~~///…………くそっ…。俺の負けだ。」
「クスクス………で、今日のご用命はなんでしょうか?聖騎士様?」
ちらりとその顔を覗き込むと、はぁ、と盛大なため息を吐いた獅朗は、エレナをぎゅうと抱き締めながらその柔らかな髪に自分の鼻先を埋めた。
獅朗「あー………これからやる試験の監督__特に騎士と手騎士あたりを中心に頼むわ。」
メフィ「ちょっ!!藤本さんっ!?今完全に私のこと忘れてませんかっ!?…………ならば、仕方がありません。…………ここは、私も交ざらせていただきま___(ドッ)__っ!!!!」
メフィストの顔の横に垂れた髪を弾丸が掠めていった。
その弾丸の出所であろう銃を未だメフィストに向けたまま、眉間に皺を寄せた獅朗が睨みをきかせている。
獅朗「………何度も言わすな。メフィスト。こいつは俺んだ。………次はお前の心臓ぶち抜くぞ?」
顔を左右に振りながらくるりと後ろを向いたメフィストは、後ろ手に手を振りながら去っていく。
その後ろ姿を疎ましげに見つめる獅朗に、思わず苦笑してしまうエレナ。
メフィ「…はいはい。今日のところは退散致しますよ。…今日のところは。……では、エレナさん♡この次は二人っきりでお会いしましょう♡」
パチンッ
指を鳴らす音と同時に消えたメフィストの姿。
獅朗は、ふう、と短く息を吐くとやっとエレナからその体を離した。
一瞬、真剣な眼差しでエレナの瞳を見つめ、再び近づく獅朗の顔。
「…ん……。」
唇に当たる柔らかな熱。
いつものように激しく噛みつくこともなく、優しく触れるだけのそれに、獅朗の想いが込められているような気がした。