第2章 昔ばなし
エレナはふわりと微笑むとパッと両手を広げた。
目の前のライトニングは、帽子の下で一瞬目を見開くと、口許を弛めたまま自らも同じように両手を広げる。
ライト「エレナ~~~~~~♪」
勢いよくぎゅうと抱きついてきたライトニングの背中をポンポンと撫でると、ライトニングはエレナの肩にすりすりと顔をすり付け、その度に彼の髪が彼女の首もとを掠めるため、くすぐったさに体をよじっていた。
「ふふっちょっと、くすぐったいって!もう~」
ライト「ごめん~~でも、ぼかぁ頑張って風呂に入った甲斐があったよぉ!」
「だって、約束だったもんね?お風呂入ったらハグしていいよって。」
耳元で彼女のクスクス笑う声が聞こえ、ライトニングの胸は温かいものでいっぱいになっていく。
普段からエレナとライトニングは仲が良く、任務も一緒になることが多く、彼が極度のお風呂嫌いであることをエレナも知っている。
シュラやエンジェルのようにあからさまに嫌がる態度を取らないエレナだったが、ライトニングがその事を尋ねると、
「お風呂にちゃんと入ったら挨拶のハグも出来るのにね。」
と言われた。その事を覚えていたライトニングは、彼女が本部に帰ってくるという報せを聞き、慌てて長期間の汗や汚れをまとった全身をくまなく洗い尽くしてきたのだった。
そして、まさにその努力が報われた瞬間だったのだ。
「偉かったねー!毎回こうやって挨拶できるといいね。」
柔らかな笑顔を向けるエレナ。
その笑顔に、ドクン、と跳ねるライトニングの心臓。
アーサー「はっはっは!久々だからってハグする相手を間違えてるぞ~!さぁ来いっエレナ!お前のフィアンセのもとへ!!」
恐ろしいほどの天然?っぷりを発揮したエンジェルに、未だ抱き合ったままの二人の表情は唖然としたまま固まってしまう。
「ア、アーサー…?」
ライト「………ぼかぁ、君のあまりの空気の読めなさっぷりに開いた口も塞がりそうにないよ。エンジェル……」
エレナらの動揺が伝わるはずもなくエンジェルは笑顔のまま更に両手を大きく開く。
アーサー「さぁ!恥ずかしがることはない!」