第2章 secret.1 契約
ピチョー…ン…。
「…ん…?」
断続的に落ちる水音に、だんだんと蓮華の意識が戻ってきた。
薄く開けた目が状況を把握する為に左右に揺れる。
「どこ…ここ?」
瞳が暗闇に慣れたことを確認してから、蓮華は重たい体をゆっくりと起こす。
広い部屋の真ん中に横たわるように気を失っていたらしい蓮華。
周りにある家具はどれも古く壊れていて、ホコリが積もってしまっていた。
キョロキョロと辺りを確認して危険が無いことを確認し、音を立てないように注意して部屋から出られるであろう扉に歩みよる。
ギィ…ッ……。
体重をかけてやっと動いた重い扉の向こうには長い廊下が続いていた。
暗く、先の見えない廊下。
もしかして…ここ洋館の中?
いや、確実に洋館の中だろう。
廊下には赤い絨毯が引かれていて、壁には洋風のランプがかかっている。
ひびが入っていて、蜘蛛の巣がとりまいているランプに火が灯る気配はない。
出口…出口。
気を失ってどれだけの時間がたったのか…。
何故自分が洋館の中にいたのか…。
疑問は尽きることなく湧き上がってくるが、蓮華の頭は自分でも驚く程に冷静だった。
しばらく長い廊下に響く自分の足音を耳にしながら歩いて行くと、その終わりに大きな扉を見つけた。
「……」
もしかしたら、この扉が外に通じているのかもしれない。
そう期待を込めて、蓮華はそっと扉に手をかけた。