第3章 secret.2 正体
ベッドは後日マンションに届けるということになり、不服そうな烙抖を連れて蓮華は店を出た。
「ちっ、今日もソファーかよ」
腕を組みながら舌打ちをする烙抖。
「遅くても明後日には届くから」
日が傾きかけている。
今日の夕食なににしよう。
蓮華は空を見ながらぼんやりと考えていた。
「ねぇ、烙抖くんは…」
開きかけた口を閉じる。
烙抖くんに夕食のこと聞いたってだめだよね。
蓮華はいまだに烙抖を吸血鬼と認識しきれていないところがある。
不思議と烙抖はこの人間世界に溶け込んでいた。
烙抖を取り巻く独特の雰囲気はどうしようも出来なかったが…。
「…なんだよ」
聞きかけて止めたことが気にさわったのか怪訝そうに蓮華を睨む。
「何でもないよ」
ニコッと笑いかけて蓮華は前に視線を戻した。
夕日は蓮華達に影を落とす。
ざわめく周りの音とは裏腹に、蓮華達は会話をすることもなく家路へと向かった。
途中烙抖は蓮華の隣で、顎に手を当ててあの満月の夜のことを考えていた。