第3章 secret.2 正体
学校から離れて、行きつけの家具屋に行く。
「いらっしゃい、蓮華ちゃん」
店に入ると明るい声で店長が出迎えてくれた。
昔から椿家はこの家具屋を利用しているので、店長とは仲がよい。
けして大きくはないが、家具はどれも魅力的だ。
蓮華のマンションにある家具もほとんどがこの店で買っている。
「店長お久し振りです」
蓮華はぺこっと丁寧に頭をさげた。
「相変わらず可愛いね。隣は彼氏さんかい?」
烙抖に視線を送るが当の本人はさっそくベッドを品定めしている。
「彼氏じゃないです」
苦笑しながら否定すると、店長は残念と肩をすくめた。
学校では烙抖のせいで二人は付き合っていることになっているが、あえて店長には嘘をつきたくなかった。
「今日はベッドかい?」
「はい」
烙抖は並んでいるベッドに寝転がりながら、これは違うと呟いている。
「蓮華」
やがて品定めが終わったのか、烙抖が一つのベッドを指差して蓮華を呼んだ。
「これ?」
「へー、お目が高いね」
烙抖のもとに蓮華と店長が近づいていく。