第3章 secret.2 正体
「ベッド…?」
どんなに体を揺らしても起きなかった烙抖がその言葉に反応した。
「あ、起きた」
千夏と目が合った烙抖は、眉を寄せる。
寝起き一番にコイツかよ、と顔に書いてある。
「あはは、ごめんね」
千夏も烙抖の顔の言葉を読み取ったようで、イスに背中を預けて笑った。
「烙抖くんおはよう」
「ん、それよりベッド」
まだ眠たそうに半開きになった目で烙抖は立ち上がる。
「じゃ、お邪魔虫は退散しようかなー」
言うが早いか、千夏はカバンを持って蓮華に手を振った。
「バイバイ蓮華」
「うん、また明日ね」
蓮華も手を振り返すと千夏は足早に教室を出ていった。
二人残された教室。
「よく寝てたね」
「…まぁな」
烙抖は大きく伸びをする。
「行こっか」
蓮華もカバンを持つと烙抖と一緒に教室を出た。
静かな校舎を出ると校庭から、掛け声が聞こえてくる。
運動部が練習をしているのだろう。
烙抖は校庭を見ていたが、さして興味もないと言うようにすぐに前を向き直った。