第3章 secret.2 正体
「…よく寝るなあ」
千夏が感心にも似た声で烙抖の髪の毛を引っ張る。
烙抖はそれでもすぅすぅと寝息をたてていて、ちっとも起きる気配はない。
クラスはもうHRまで終わっていた。
教室に残る生徒もいない。
どんなに体を揺らしても起きない烙抖をそのままにも出来ず、蓮華はしょうがなく目が覚めるのを待つことにした。
「にしても…」
千夏は蓮華の前の席に座りながら、トントンと自分の首筋を叩く。
「愛されちゃってるねー」
うふふと千夏は目を細めた。
「いや、違っ…」
「隠さなくていいって!
…キスマークでしょ?」
このこのと言うように蓮華を肘でつつく千夏。
コロコロと変わるその表情を蓮華は困ったような顔で見る。
「まぁ…」
蓮華は言葉を濁して答えた。
キスマークと言えばキスマークになるのかな?
蓮華は首筋を押さえた。
「これじゃ、ベッド買いにいけないかな…」
寝ている烙抖にポツリと呟くと、千夏がなんで?と蓮華を覗く。
「いや、烙抖くんのベッドがないから」