第3章 secret.2 正体
「ただの幼馴染みだ」
そんな蓮華に助け船を出したのは烙抖だった。
「天羽くん…」
千夏はいきなりの烙抖の登場に驚きを隠せない。
「お前は?」
「千夏。蓮華とは親友よ」
ね、と千夏は蓮華にウインクをした。
「蓮華来い」
烙抖は千夏を見たあとで蓮華の腕を掴んだ。
「でも…」
「私のことはいいから行っておいで」
千夏は手を振って蓮華を見送る。
「千夏ごめん」
それを合図に蓮華は烙抖に引っ張られながらその場を後にした。
「烙抖くんどこに行くの?」
先を行く烙抖には蓮華の言葉が届いていないようだった。
…手、痛い。
蓮華の手首は烙抖に強く掴まれ赤くなっている。
「…っ」
烙抖が苦しそうに短く声を漏らした。
バンッ!
すぐに背中に衝撃が走る。
人気のない階段の下にある空間。
そこで蓮華は壁に押し付けられていた。
向き合った烙抖の顔は苦痛に歪み、荒く息を繰り返す。
初めて会ったときと同じ顔ー…。
蓮華の胸にヒヤリとしたものが広がった。