第3章 secret.2 正体
「お前、なんか失礼なこと考えてるだろ」
「えっ」
冷ややかな視線を蓮華に向ける烙抖。
私顔に出てたかな?
蓮華は顔に手を当てる。
烙抖は味噌汁をすすっていた。
“人間の食べ物は吸血鬼の腹にはたまらないんだよ”
そう言っていた烙抖だが、蓮華と一緒に毎回ご飯を食べる。
なんでだろ?
烙抖の考えは蓮華には分からなかった。
「時間、大丈夫なのかよ」
「あっ、やば」
気づくとあと5分で家を出ないといけない時間になっていた。
急いで食器を片付けて歯を磨く。
烙抖はそんな蓮華とは逆に、ゆっくりとした動作で食器を片付ける。
…俺も行くか。
「烙抖くん、私学校に…」
「早くしろ」
リビングに入ってきた蓮華に面倒くさそうに声をかけると、烙抖は玄関を開けて外に出た。
日差しが強い。
やはり太陽の光は吸血鬼には少しキツイ。
「まだまし…か」
普通の吸血鬼なら太陽の光に10分でも当たれば、血が足りなくなるだろう。
天羽一族。
今や確認出来る存在は烙抖だけだが、今でもその名は恐れられている。
後ろでバタバタと蓮華が走ってくる音が聞こえた。