第2章 secret.1 契約
「っ!」
ブツッ、と肌に牙を刺す音が頭に響く。
昨日も傷つけられたそこは、簡単に牙を受け入れた。
最初よりは痛くない。
「んっ…!」
なんで抵抗しないんだろう。
蓮華は血を吸われながらそんなことを思った。
「…っはぁ」
全身に広がる甘い痛み、鈍く体に響くそれは、何とも言えない快感を呼ぶ。
な、に…コレ?
「…っふ」
「何、気持ちい?」
烙抖が顔をあげて妖しく笑う。
口元の血を拭うその姿に蓮華の体は震えた。
「2日に一度、俺に血を捧げればいい。…めしは俺も食う」
あくまで命令口調。
だけど烙抖の瞳は優しかった。
少なくとも、蓮華はそう思ったのだ。
烙抖は立ち上がって何処かにいくと、絆創膏を持って戻ってきた。
ペタッと蓮華の首筋に貼る。
牙の痕が隠れる大きさの絆創膏。
「他人には見られるなよ」
「…ぅん」
見つかれば大変なことになる。
それくらいは蓮華でも分かる。
人間しかいないと思われるこの世界で、吸血鬼の存在がバレれば国をあげて、この吸血鬼を捕まえようとするだろう。