第2章 secret.1 契約
「……」
私の血しか受け付けない…。
じゃあ、この人を生かすも殺すも私次第…?
じっと彼を見る視線に気づいたのか、烙抖が顔を寄せる。
「何考えてる?」
「別に…」
視線を反らした蓮華を見つめながら、烙抖は手を伸ばした。
自分が傷つけた、深くて醜い牙の痕。
そこを指先でなぞると蓮華の体が強張るのを感じた。
…己の飢えを制御できなかった。
情けねぇな。
「悪かった」
「えっ」
小さく呟いた言葉を聞いて、蓮華は弾けるように顔を上げた。
「痛かったろ?
結構…貪ったからな」
苦笑しながら言う烙抖を見て、蓮華は言葉を失っていた。
「今の、忘れてくれ」
くしゃっと蓮華の頭をなでて、烙抖は顔を背けた。
この人…思ってるより悪い人じゃないのかな?
蓮華はふとそんなことを考えたが、すぐにその考えを吹き飛ばした。
この人は私の血を飲む吸血鬼だ。
それ以上でも、それ以下でもない。