第2章 secret.1 契約
夢を見た。
口から零れた血を拭いながら、赤く光る目。
闇の中に光る鋭い牙。
でも、その顔は見えなかった。
「…?」
くすぐったい感触を感じて、蓮華は眠りから覚めた。
「やっと起きたか」
烙抖は蓮華の首筋に顔を寄せてそこを舐めていた。
「なっ、なにしてんの?!」
がばっと体を起こして烙抖を睨む。
「お前、どんだけ寝るつもりだ?」
逆に睨まれて蓮華は時計を見る。
現在7時43分。
窓からは朝日が差し込んでいた。
「………」
しばし混乱する頭を抱えて考える。
この人と会ったのは、夜の8時。
で、今は朝の7時43分…。
ってことは、夜が明けて、日にちが変わって…。
…じゃあ、今日は土曜日か。
「学校休みでよかった…」
「学校?」
烙抖は不思議な顔で蓮華を見…。
「なんで普通にここにいるのっ?!」
気だるさはもう感じていなかった。
「あ?」
ちっと舌打ちをしながら蓮華の顎を掴む。
「契約しただろ。一緒にいるのは当たり前だ」
契約…。
自分の手首に目を向ける。
やはりそこにははっきりと契約の刻印があった。
「俺はお前の血しか受け付けねーんだから」