第1章 好きって言って
春休み、用事のない日は直樹の家に遊びに行った。
直樹の部屋で勉強したり、マンガ読んだり、ひたすらおしゃべりしたりした。
すっごく楽しかった。
私は直樹のことが好きなのかもしれない。
直樹もきっと私のことが好きだろう。
でも多分、それは私の好きとは違う。
ひさしぶりに接してみてつくづく思った。
直樹は子供の頃から何も変わらない。
良くも悪くも。
…
直樹の部屋で勉強してるとき。
ふと、隣を見ると直樹は居眠りしてた。
私は直樹の寝顔をゆっくり眺めてみる。
まつ毛長い…頬がちょっと赤くてやわらかそう…唇も…
キスしたい
って、私は思う。
でも、そんなこと出来るわけないし。
私も机に突っ伏して、直樹の顔を近くで見てみる。
ふふ…可愛い。幸せ。
私もそっと目を閉じてみる。
…
気がつくと、私は寝てた。
私の背中には、毛布がかけられてた。
「あ…これ、直樹がかけてくれたの? ありがとう」
私はベッドに寝ころんで、マンガを読んでいる直樹に声をかける。
「うん。ゆうちゃんが勉強中に寝ちゃうなんてめずらしいね。疲れてるの?」
直樹がベッドから降りて、私の隣に座る。
私の顔をのぞいて優しく微笑む。
私は寝起きの顔が変なんじゃないかなって恥ずかしくなる。
「ふふっ。直樹が隣で寝てたから私も眠くなっちゃっただけ」
直樹のせいにして言い訳する。
「そっか。どうせだったら2人で布団で寝ればよかったね。今度、眠くなったら教えてね。一緒に寝よ」
直樹は毛布のかかった私の肩を抱いてニッコリ笑う。
私は顔が赤くなるのを一生懸命耐える。
でもそんなこと出来るわけもなく、多分めっちゃ顔赤い。
直樹は子供のときと同じ笑顔のまんまで平然とニコニコしてた。